働き方&仕事観

働き方改革から「週休3日制」そして副業解禁の流れはやってくる

投稿日:2020年5月16日 更新日:


経団連は、5月14日に「オフィスにおける新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン」を発表。その中に「週休3日制」という表現が含まれました。

テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務)、時差出勤、ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務)、変形労働時間制、週休3日制など、様々な勤務形態の検討を通じ、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑緩和を図る。

経団連「オフィスにおける新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン」(3)通勤

本来、「働き方改革」の流れから徐々に浸透していくと考えられた週休3日制。
コロナウィルス禍において、安全性の面から通勤を分散する一手段として、ガイドラインに明記されたようです。

しかし、どのような形であれ「週休3日制」が指針に明記されることで、「週に5日働くもの」という固定観念が崩れ、コロナウィルスが落ち着いたあとも前向きに採用する企業が出てくると思います。

では、この週休3日制。我々にどのような働き方をもたらすのでしょうか。
海外の事例から見ていきたいと思います。


先進国での「週休3日制」の導入状況とメリット

週休3日制は、日本ではまだ課題が多く、ほとんど導入されていないものの、欧州では働きすぎによるストレス・燃え尽きを防ぎ、健康で幸せな生活を営むために、既にいくつかの国・企業で試験的に導入されています。

オランダ

オランダではいち早く働き方改革(ワークライフバランス)が推進され、20年前に「同一労働同一賃金」や「ワークシェアリングの」考え方が定着。
OECDによると、全労働者の1週間の平均労働時間は29時間という、先進国では最も短い調査結果が出ています。

労働者に手厚い制度に変わり、社会全体がうまく適用しています。労働者からも、労働時間の長さへの満足度が高いようです。

ニュージーランド

ニュージーランドの企業(パーペチュアル・ガーディアン社)でも、週4日労働を2ヶ月採用しました。1日の労働時間は8時間として、5日のときと同じ成果を出すことめざし、給料もきちんと従来と同じ分5日分支払われます。

この宣言が出された時は従業員も戸惑いがあったようです。
しかし、「仕事の自動化や工夫を図り、協力し合えた」「休みが増えたことでストレスが低下した」といったポジティブな調査結果が出ています。
大半は良いコメントだったものの、一部のコメントには「短期間で仕事をすることストレスがあった」「サービス品質低下につながる」といったネガティブな意見も挙がっています。

イギリス

英レディング大学・ヘンリー経営大学院のレポート「Four Better or Four Worse」によると、イギリスで週休4日にした企業では「従業員のストレス軽減」や「幸福度が得られる」といった点で特に高い成果が出たという結果が出ています。

集計結果をさらに見ていくと、「生産性向上」や「有能な社員の引き留め」にも効果があり、採用した企業の多くは、週休4日制をポジティブに考えていることがわかりました。


「週休3日制」にデメリットはあるか?

ここまで見ると、軒並み先進国では「週休3日制」が好評のように見えます。

でも、本当に良いことばかりなのでしょうか?
しっかり両面から捉えられるように、ネガティブな記事がないか探してみたところ、「ハーバードビジネスレビュー」に、こんな記事を見つけました。

2019年、ロンドンに本部を置くウェルカム・トラスト(世界第2位の研究資金支援財団)は、800人の本部スタッフに対する週4日労働制を打ち切った。「実施するのが業務上、あまりにも繁雑」だからである。
また米国では、大手IT人材企業のトリーハウスが2016年に週4日労働を実施したが、同業他社との競争に後れを取ったために、週5日労働に戻している。

ハーバードビジネスレビュー「週休3日制は欧州に定着するのだろうか」

ヘンリー経営大学院のレポートでは、割と好評だったイギリスでも、打ち切られた事例がありますね。
また、スウェーデンでは、週休3日制ではなく、1日の勤務時間を減らす試みを取り入れた結果、次のような事実があったことも書かれています。

イェーテボリ市は2015年に1日6時間勤務を実施したのだが、そのために追加の看護師を雇わねばならず、130万ドルのコストが発生した。
反対派は、経済的に持続可能ではない方式に納税者の金をつぎ込むのはアンフェアだとして、市にこの制度を廃止する動議を提出した。

ハーバードビジネスレビュー「週休3日制は欧州に定着するのだろうか」

時間を減らしたことで労働力不足が発生したということは、「週休3日制」にしたとしても同様の問題が発生することが想定されます。

従業員の幸福感やストレス低減がメリットだったのに、デメリットでは、コストや生産性に対する悪影響が挙がっています。

原因はもっと深掘りしないとわかりません。
しかし、安直に「週休3日制」を導入すれば良いということではなく、週休3日にした場合の制度設計や、生産性や品質向上施策をきちんと考えておかないと、企業内でちぐはぐになり、競争力低下につながることが考えられます。

将来的に、政府や経団連が推奨することになったとして、その際に企業が何も考えず「週休3日制を導入すること」が目的化されると、少し危ういように思います。
特に、医療や介護、生活に必要なインフラを扱う企業などは影響を十分に考慮する必要がありそうです。


ただし、今後は人工知能(AI)や5Gといったテクノロジーの推進により、遅かれ早かれ週休3日制度の導入が進むと、私自身は見ています。


個人は「労働時間削減」にどう備えていくか?

超高齢化社会の日本で週4日労働・休暇3日が導入されたとして、そのまま賃金が5日分据え置きになるとは思えません。
ベーシックインカムと併せて導入なら分かります。しかし、それも年金制度の見直しが必要なので時間はかかるでしょう。

労働日数が減る分の賃金不足分を補填するために、一人ひとりが「休みを使って自分で稼ぐ」ことも必要になってきます。
今後、この流れに向けて、政府も企業も副業解禁が急速に進むと思います。
すでに厚労省からは「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が出ています。

「結局、副業したら、週休3日じゃないんだけど……」

私もそんな気がしてきました。
すでに「自分の好きなこと」を副業にして準備を進めている人、実際に稼いでいる人は、この時代を生き抜く力があると思います。しかも、ストレスがないので最強です。

好きなことにせよ、自己投資にせよ、どんな小さなことでもいいから、副業解禁を見据えて行動した方が良いと、私自身、改めて思い直しました。

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