あなたが受けた親切は、実はあなたの心理を操ろうとする相手の思惑だったのかもしれない……。
そう考えると何か怖いですね。
しかし世間では、親切を巧みに使い、販売促進や勧誘につなげようとするテクニックは常套手段になっています。このようなテクニックを「返報性の法則(原理)」と言います。
返報性の法則、面白いですね。
教科書的な説明は他のブログに任せるとして、私なりに分かりやすく解釈したいと思います。
”相手の心理をコントロールする”返報性の法則とは?
返報性の法則とは「受けた恩義(好意)には必ず報いなければならない」といったような人間の心理です。
例で考えると理解しやすいと思います。 一番わかりやすいのは、やはりデパ地下やスーパーでの試食ではないでしょうか。
「ちょっと食べてって〜」と言われて、立ち止まって試食。
その親切に報いるために「美味しい」と言ってあげて、何となく買ってあげないと申し訳ないと思い、購入。そんな経験はないでしょうか。
これがまさに「返報性の法則」です。
近い言葉と言えば「ギブアンドテイクの精神」でしょうか。
これを返報性に少し近づけると… 「ギブしてテイクしようとする作戦」または「相手からテイクしたら、自分もギブしなければならない不穏な心理状態」と考えられます。
返報性の法則のすごいところは、小さな好意で大きな見返りを得られるところです。
ギブする人は自分の意思で与えているのに、テイクする人は自分の意思に関係なく「返さないと申し訳ない気持ち」だけ背負わされます。
この心理をマーケティングに使わない手はありません。
好意だけではない、返報性の種類
返報性の法則は「好意」に加えて、いくつか種類があります。
好意の返報性:相手から受けた好意に対して、私も好意で報いたくなる
敵意の返報性:相手から敵意を示されたら、私も敵意を感じる
譲歩の返報性:相手から譲られたので、私も譲ってあげよう
自己開示の返報性:相手が心を開いてくれたので、私も心を開きたくなる
この中で、私自身、高度なテクニックだと思うのが「譲歩の返報性」です。
例えば、何かお願いをしたいことがあったとします。普通に頼むと、断られる可能性が高いお願いです。
ここで、正攻法でいくのではなく、先に別の難しいお願いをして相手に一度断らせます。
そこで自分も「分かりました……」と(残念そうに)いったん譲歩します。
この後に続けて「では、こちらではいかがでしょうか……」と本来のお願いをすることで、相手からの譲歩(お願いへの承諾)を引き出します。
2度は断りづらいし、譲歩してくれたことに報いようとする譲歩が生まれます。もちろん100%通じる訳ではありませんが、確率はぐっと上がります。
見事に心理をコントロールされていますね。恐ろしい。。
返報性を自分の身近な事例で考える
返報性について、本で書かれた内容を教科書的に説明するのは簡単ですし、それを読んで理解した気持ちになることもできるでしょう。
でも、大事なのは「理解したつもり」になるのではなく、本で書かれたことを「知識」にすること。
「わかる」と「使える」は雲泥の差です。
どんなシーンでもいいので、自分の仕事や人間関係に当てはめて考えてみましょう。
- お得意先の訪問で、頼み事をする前に何か手土産を持っていく。(好意の返報性)
- 定期的に後輩に昼食をおごる。(好意の返報性)
- 嫌な役割をお願いするときに、もっと嫌な役割を先に提示する。(譲歩の返報性)
- 売りたいものがあるときに、少し高いものを一生懸命説明して、申し訳なさそうに断らせる。(譲歩の返報性)
- 上司・部下に対して、自分が正直に思っていることを赤裸々に話してから、相手の本音を聞き出す。(自己開示の返報性)
好意の返報性では、高価なものを与える必要はなく、安価なものや親切な行為でも効果があるようです。
ここまでの流れで、「いや対人関係に見返りを求めちゃダメでしょ」という違和感を感じた方もいると思います。
もちろん、見返りを求めずギブし続けることができる人は、良いことです。
「与える人(ギバー)」には、期せずとも結果としてテイクが多くなります。
ただ、見返りを求めなくても、背後にこのような心理があることを理解しておくことは大事です。仕事においては立派な営業・販売テクニックです。
「返報性」の知識があれば、売り手による巧みな手口から防衛できるようになりますし、このテクニックは覚えておきたいところです。