「ジョブズのようなプレゼンをしたい」
スティーブ・ジョブズが亡くなって長い年月が経つというのに、今もその名がプレゼン上手の代名詞(形容詞)となっています。
「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」は、まさにプレゼン上手になるためのバイブルで、イベント講演者や講師はもちろん、学校や社内での報告会など、人前で話す人は必読です。
スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン
ジョブズのプレゼンをストーリーの作り方、コトバの使い方、間の取り方など、あらゆる角度から分析した名著です。何度読み返しても新しい発見があります。
今回は、この本の中から、ストーリーを作る上でのポイントに絞って、重要な点をいくつか抜き出したいと思います。
目次
ジョブズプレゼンの極意①構想は紙と鉛筆でまとめる
スティーブ・ジョブズは、紙と鉛筆を使ってストーリーを組み立てていました。
アナログで考えた方が、スライドの枠や、ソフトウェアの機能に捉われず、映像としての可能性が広がるからだと言われています。
特に、スライド上の箇条書きは、「諸悪の根源」として、ジョブズのプレゼンでは一切使われていません。
名著「プレゼンテーションZen」にも、アナログで考えるべき理由が書かれています。本書の中からの引用です。
「最初に紙と鉛筆を使い、『アナログ世界』でアイデアをざっくりまとめておくと何かが違う。そのアイデアをデジタル技術を使って提示するとき、なぜか、明快かつ創造的となり、優れたプレゼンテーションになるのだ」
禅を愛したジョブズとしても、考える段階でシンプルな方法を好んでいたのでしょう。
「プレゼンテーションZen」も素晴らしいバイブルです。こちらの記事もご覧ください。
ジョブズプレゼンの極意②記憶に残るヘッドラインを考える
「これから行うプレゼンで、一体何を伝えたいのか?」
聴衆に覚えて欲しいことを突き詰めて考え、「ヘッドライン」としてまとめることがジョブズ流プレゼンの極意です。
ヘッドラインは「メッセージ」と置き換えても良いでしょう。ヘッドラインの条件は3つ。「簡潔」「具体的」「利用者にとってのメリットがわかる」です。
Apple社で有名なヘッドラインの一つが、iPodの「1000曲をポケットに」。
これほどまでに、簡潔で具体的で、うれしさが伝わる表現はなかなか見つかりません。
他にも、次のようなものが紹介されています。
アップルが電話を再発明する。(iPhone、2007年1月)
iPone 3G。速度は2倍、価格は半分。(iPhone、2008年7月)
業界で最もグリーンなノートパソコンだ。(Macbook、2008年10月)
これらも良いけれど、やはり「1000曲をポケットに」が秀逸です。
どんな詳細な説明をも凌駕する「珠玉の一言」が見つかれば、一瞬で多くの人の脳にイメージを植え付けられます。
ジョブズプレゼンの極意③製品・サービスの説明は文脈が必要
聴衆に響くプレゼンには、文脈があります。
ジョブズプレゼンには、製品が「どのように」良いかを紹介する前に、「なぜ」その製品が必要なのかを語る文脈があります。
初めてiPhoneを紹介したプレゼンでは、既存の携帯端末の「下側4割」にボタンがあることを嘆き、スタイラスペンがその解決にならないことを述べます。
大きなスクリーンに指でタッチするiPhoneの素晴らしさを情熱的に語っています。
これまでの携帯端末の問題から、 解決策の提示への流れ。その中で「聴衆のどのような未来を創るのか」ワクワクした内容になっています。
過去・現在・そして未来への流れの中で、聴衆の感情が大きく揺さぶられる筋書きこそが、文脈のあるプレゼンです。
ジョブズプレゼンの極意④敵役を入れる
文脈の中に含まれるものとして、重要なポイントがもう一つあります。
それは、ストーリーの中に敵役を入れることです。
iPhoneに対する、それまで発売されていたボタンだらけの携帯端末。
Macに対する、待ち時間や設定作業の多いパソコン。
つまり、単に問題に対する解決ではなく、具体的な悪役を立てて比較します。その方が、ただ良い点を紹介するよりもコントラスト(対比効果)があり、強く印象に残ります。
敵役を入れて、どのような問題提起にするか。そのことが書かれた部分を引用します。
問題提起は長い必要などない。ジョブズが敵役の導入に使う時間はせいぜい2、3分だ。やろうと思えば30秒でも可能。以下の質問、4つのすべてに答えられる1文を作ればいいのだ。
(1)何をするのか?
(2)どの問題を解決しようとしているのか?
(3)ほかとはどう違うのか?
(4)なぜ気にかける必要があるのか?
上記をiPhoneで当てはめると「携帯端末のボタン部分をiPhoneの指操作にすることで、毎日のストレスから解放され、快適な暮らしができる」といったところでしょうか。
プレゼンで最も大切なのは「情熱」
この本で、何度も繰り返されるコトバがあります。それが「情熱」です。
ジョブズは、自分の仕事を心から愛し、最高の仲間と作り出した製品に誇りを持っていました。 次のようなジョブズの言葉が紹介されています。
「大好きなことを見つけてほしい。仕事というのは人生のかなり大きな部分を占めるわけだけど、本当に満足するには、すごい仕事だと信じることをすることをするしか方法がない。そして、すごい仕事をするには、自分がすることを大好きになるしか方法がない。まだ見つからないなら、探し続けてほしい。あきらめちゃいけない。」
この語りは極めてやさしい表現で、自分の思いを熱を込めて語っていることがわかります。
プレゼンのテクニックはもちろん必要です。しかし、その前に自分が紹介するものを好きになり、情熱を持って語る姿勢が何よりも大事であることがビジビシ伝わってきます。
まだ読んでいない方は、ぜひ一度。すでに読まれている方も、もう一度読んでみてください。ハッとさせられるところがたくさんあります。