外山滋比古さんが、ご逝去されました。
英文学や国語(文章)を専門とする知のカリスマで、名著「思考の整理学」は、論文やレポートを書くときの基本として、東大生・京大生をはじめ、多くの学生に繰り返し読まれました。
いつも好奇心を持っていた方で、93歳にして出版された「知的な老い方」からも毎日楽しんで学んでいたことが伝わってきます。
知的な老い方
この本は、定年を前にした年代から、それ以降の世代の方向けになっていると思います。
しかし、外山さんの生涯現役の精神は、若い頃からの「毎日の積み重ね」で積み上げられたものです。また、高齢を迎える両親が居る方は、永く元気で居てもらうためのヒントになると思います。
まだまだ現役世代の私ですが、この本を読んで、感じたことや学びをまとめていきます。
生涯学習に必要な「習慣の力」
「LIFE SHIFT」に書かれている「人生100年時代」を生きる多くの人は、60歳に引退は迎えません。
もちろんセミリタイア・アーリーリタイアは一つの目標になりますが、多くの人は何度か職を変えながら、自分を再定義しながら生きていかざるを得なくなるでしょう。
このときに大事なことが「学び続ける力」です。
外山さんは、若い頃から日記を毎日書き続けていたそうです。さらに、80歳になって新しい出版の仕事を始めたり、株式投資に挑戦してみたりと、とにかくバイタリティに溢れていることがこの本からわかります。
例えば、会社が傾き始めてから危機感に煽られて勉強する人と、毎日勉強の習慣がある人では、後者の方が変化に対応しやすいと思います。というか、すでにスタート地点で大きな差がついていますね。
歳を重ねると、体力が落ち、体力が落ちると気力が落ちてきます。気力の低下は、運動だけでなく勉強にも影響を及ぼします。
何かを思い立って意識的に勉強を頑張ろうとするのではなく、当たり前の習慣(状態)にしておくことで、未来を生き抜く原動力になるのだと思いました。
高い生産性を生む「朝の活用」と「運動」
外山さんは朝の時間は最強と捉えており、脳のスッキリした状態で仕事を片付けるようにしていました。まさに「仕事は朝飯前」だそうです。
朝の活用は、仕事効率化のノウハウ本には必ず書かれていることで、そのような本が出るずっと前から朝活を続けていたそうです。
朝の力は絶大で、私自身も朝に文章を書くことで、2倍以上のスピードで、修正の少ないものが執筆できています。
さらに外山さんの場合、お昼頃(前)に軽く睡眠を取ることで、脳が再びスッキリして「1日を2回」にしていたそうです。この考え方は面白いですね。脳を整えてから、思考を整理していたのだということがよくわかる考え方です。
体や脳を維持するには運動も大事。 歩みの遅くなった外山さんでも皇居一周ウォーキングができるように、定期を購入して小分けに行っていたそうです。そうすることで、もったいないから続けようというプレッシャーをかけていたのだとか。
忘れっぽくなることも前向きに捉える「ポジティブシンキング」
外山さんが、生涯現役で活躍されていた大きな理由には、根底に「ポジティブシンキングがある」ことが大きいと読み取れます。人と接すること、ネクタイをしておしゃれをすること、全てを前向きに捉えて積極的に行動していることが文面から伝わります。
そして、高齢化することに伴い「忘れっぽくなること」も、外山さんの思考ではネガ→ポジ変換されます。
健全な忘却は人生を豊かにする。必要だと思うことはレム催眠によって整理され、忘れたいことは忘れる。逆にコンピューターには人間のように忘れることができないと言います。
一部を引用させていただきます。
人間は記憶するけれども、それをいつまでも、そのまま覚えているのではない。時とともに忘れていく。それだからこそ、頭はこわれないですんでいる。
(中略)
コンピューターには、人間のしているような選択的忘却といった高級な芸当は思いもよらない。 忘れることで、人間はコンピューターに勝つことができる。適度の忘却ということは人間の幸福に欠かすことができない。
もちろん、ただ、忘れればいいのではない。忘れた分、たのしいこと、うれしいことで補充をする。
最後のフレーズは、ものすごく素敵な考え方だと思います。
これからの日本では、認知症など高齢化に伴う問題が広がっていくことが想定されます。
高齢者の目線でどう考えていくか、また自分が老いていくことをどう捉えていくか。
なかなか難しいこともあるけれど、常にポジティブに考えるものの見方ができないかと思いますし、そこに大きな人間的成長があるように思います。