池井戸潤原作のドラマ「ノーサイド・ゲーム」が、週末に再放送されています。
再放送を見ながら、改めて、会社員が勇気づけられ、スッキリさせられる、内容のあるドラマだったなと思います。
「ノーサイド・ゲーム」を簡単に紹介すると…
出世競争から脱落し、左遷された主人公・君嶋(大泉洋)が弱小ラグビーチームのGMに就任し、数々の苦境を乗り越えながら強豪チームに成長させていく、まさに「池井戸イズムの真骨頂」といえる作品です。
ラグビー部員(キャスト)は、元日本代表を含むラグビー経験者を中心に構成。
練習や試合のシーンでも、しっかりコンタクト(接触)が伝わる臨場感に溢れた映像になっています。
「ノーサイド・ゲーム」はフィクションではあるものの、ビジネスにおいて学ぶべきポイントがたくさんあるドラマです。
ということで、今回は「ノーサイド・ゲーム」で大泉洋が演じていた君嶋GMのマネジメント力について、熱く!?語っていきたいと思います。
チームを動かす「ミッションステートメント」の重要性
リーダーとして、働く意味を表現した「ミッションステートメント」の重要性がこのドラマから感じ取れます。
ドラマ前半でいきなりチームの転換点となるシーンが訪れます。
GMとして覚悟を決めた君嶋はラグビー部員を集め、ラグビー部の存在自体が多額の負担であり、お荷物になっていることを部員に伝えます。
内心では優勝なんてできないと思っている部員の本音をえぐりつつ、「サラリーマンに努力賞はない」という厳しい口調の言葉を発します。
「君たちはどん底だ。それをまず自覚しろ。そして後は上だけを見ろ!」
さらに続いて発したメッセージが、チームのミッションとなる一言になっています。
「結果を出すんだ! 優勝してアストロズの名をこの国に響かせろ!」
経営層が掲げる目標は「売上・利益を上げること」に他なりません。
しかし、売上目標やノルマでは、従業員の心は動かせません。
危機感を煽りつつも、なぜチームが存在し、どのようなミッションが課せられているのか、メンバーに響く言葉で語りかけています。
メンバーの共感とコミットメントを引き出すリーダーシップ
GM君嶋の魅力は、決して「できる人間」として振る舞うのではなく、人としての弱さをさらけ出しながらも、部員とまっすぐ接するところです。
また、自分で思いを語りながらも、最後には部員からのコミットメントを引き出すところが良いリーダーだと感じさせるところです。
「結果を出せ」と言いつつも、最後は「どうなんだ?」と問いかけ、部員自身に自分の意思を表明させます。心理学的にも、自らの意思が伴う「コミットメント」がないと、行動につながりにくいそうです。
また、経営に関しては思い切った判断と責任感を示しています。まさにリーダーの覚悟に他なりません。
ラグビーに関しては素人であっても、徐々に部員から信頼のおける存在(権威)になっていくことがよくわかります。
大泉洋がうまく演じていますね。さすがです。
チーム運営に必要な資金の工面と、適性な配分
GMの重要な役割は、「運営資金の調達」と「ビジネスとしての収益改善」。
アストロズの存続が危ぶまれる中、チームメンバーの構成や練習環境を抜本的に見直すことで、ギリギリと言える14億円を予算化。
さらに、上司に向けて、何とか予算を通そうとする必死な姿は、日頃、自分の思い通りにいかない中間管理職の方が応援したくなるポイントではないでしょうか。
単なるスポーツものではなく、要所要所に、サラリーマンの「共感」と「スッキリ」を呼び込む胸熱シーンが入ってきます。
また、米津玄師の主題歌「馬と鹿」が良いところで入ってくるんですよね。
企業人・社会人としての地域貢献
君嶋は、地域貢献としてのボランティア活動を部員に指示します。
一方で、優勝というミッションに対して必要な活動ではないので、部員はモヤモヤします。
しかし、企業の一員として事業を通じてではなく、スポーツを通じて社会に貢献することも重要であり、この活動は「アストロズの名を広めること(集客)」につながっていきます。
ここでも、君嶋の演説が部員を動かします。
「きっと君たちが子供たちにしたことが、将来、何倍にもなって返ってくる」
企業がスポーツをやることの大きな意義が、君嶋の発言から感じ取れます。
ラグビーが大事にする「All for One, One for All.」や「ノーサイドの精神」が、池井戸作品が扱う「干されたサラリーマンの奮闘」にマッチしていて、多くの共感を生んだ作品に仕上がっていると思います。
昨年、「ノーサイド・ゲーム」を観ていたときは、「ドラマはドラマ」と思っていました。
ワールドカップラグビー前なのにラグビー人気もなく、放映されていた当初は日本戦でも割と余裕で購入できました。
しかし、徐々に認知が高まり、ラグビーワールドカップが始まると、最高の盛り上がりを見せ、日本戦チケットはあっという間に完売。
ラグビーワールドカップ後のトップリーグ(社会人リーグ)でも、多くの観客が押し寄せることになり、ドラマで起きていたことが現実になりました。
この流れに一役買ったことは間違いありません。
改めて、もっと評価されていいドラマかなと思っています。