今回は「伝え方一つで、相手の印象を変えることができ、自分の成功につなげられる」という話をまとめます。
仕事のできる営業、接客力のある店員、周りから愛され慕われる先輩など、こういった人たちが持っている能力が「伝える力」です。
例えば、イタリアンレストランで「そのピザは時間が掛かります」ではなく、「出来たてをお持ちしたいので、少々お待ちいただけますか?」と言われた場合、待たされる状況は同じなのに、印象が変わりませんか?
このようなノウハウが凝縮された書籍が「伝え方が9割」です。
伝え方が9割
コピーライターとして活躍されている佐々木圭一さんの書籍です。自身も「コミュニケーションを取るのが苦手だった」そうで、その状態から一転。コミュニケーションに関心を持ち、あらゆる法則から得た知見をこの一冊にまとめています。
この書籍の中から「伝える力」のノウハウを学んでいきたいと思います。
目次
「伝え方が9割」の人生だから、伝え方を学ぶ
本書の著者、佐々木さんは「伝え方にはシンプルな技術がある」と述べています。
「伝え方」が技術として学べるならば、学ばない理由はありません。
仕事での依頼、就職面接、プライベートでもちょっとした頼み事や、愛の告白など、人は毎日さまざまなシーンで何かをお願いしたり、交渉したりしています。
「お願い」や「交渉」が多くを占める世の中で、好印象を与えながら、一つ一つのお願い(交渉)の成功率が高められれば、自分の評価や価値を高められます。
特に、書籍の第2章に書かれている「ノー」を「イエス」に変える技術は、ビジネスでもプライベートでも、理解したその日から使える即効性の高いものと言えます。
「ノー」を「イエス」に変える7つの技術
「ノー」を「イエス」に変える方法は、相手の視点で考えること。
コミュニケーションを取る際に、次の切り口を含めると良いと書かれています。
「切り口」だとわかりにくいので、私の解釈で矢印右側に「伝え方」に書き換えています。
- 相手の好きなこと → 伝え方①相手のうれしいことを含める
- 嫌いなこと回避 → 伝え方②「して欲しくないこと」のデメリットをほのめかす
- 選択の自由 → 伝え方③「お願い」を「選択」にすり替える
- 認められたい欲 → 伝え方④高評価・好評を述べる
- あなた限定 → 伝え方⑤あなただけを強調する
- チームワーク化 → 伝え方⑥共感と同調を明確に示す
- 感謝 → 伝え方⑦感謝の気持ちを込める
この観点で、それぞれ見ていきましょう。
伝え方①相手のうれしいことを含める
誰かに何かをお願いしたいとき、相手のメリットを言葉に含めると、前向きに動いてくれる可能性が高まります。
例えば、母親から子供に「買い物行ってきて」と言われるよりも「好きなお菓子を一つ買ってきてもいいから、○○買ってきてくれない」と言われたら、行く気になる子供が増えると思います。
「お菓子を買う」メリットが含まれるからです。
もちろん、相手のメリットになるのであれば、何かを買い与える必要はありません。 この記事の冒頭で書いた、「(ピザの提供に)時間がかかる」ではなく「焼き立てをお持ちするからお待ちください」も、相手の食べたいものが「美味しく提供される」メリットが含まれます。
自分視点ではなく、相手のメリットを含めて語ること。これが鉄則です。
伝え方②「して欲しくないこと」のデメリットをほのめかす
誰かに「何かをして欲しくない」お願いをするときに、「○○しないで」というのではなく、「○○するとこんなデメリットがありますよ」という伝え方ると効果的です。
書籍の中で、面白い例があったのでそのまま引用させていただきます。
チカン撲滅のポスター案です。次のうちBがこの手法を使った表現で、効果があったそうです。
A:「チカンに注意」
B:「住民のみなさまのご協力で、チカンを逮捕できました。ありがとうございます。」
住民に注意するのではなく、チカンに向けてデメリットを遠回しに伝えています。この視点はすごいですね。
この表現を考える際は、「誰に何をして欲しいか」だけでなく、「つまるところ誰に、何をして欲しくないのか」まで突き詰めて考えるところがポイントです
伝え方③「お願い」を「選択」にすり替える
相手に何かをお願いする場合に、選択肢から選ばせるという方法です。
書籍では、デートに誘うときの例として、パスタの店か石窯フォカッチャの店かを選ばせています。
理由は「人は決断が得意ではないが、選択したい(得意)」と書かれています。
私がすごいと思った点は、美味しい店を二つ上げて気持ちを高めるだけ高めておいて、デートに来るかどうかではなく、どちらに行くかという会話にすり替えています。これはなかなか高等なテクニックだと思いました。
もちろん、ビジネスにおいても、戦略的に選択肢を置いて希望のものを選ばせるというテクニックとして使えます。
伝え方④高評価・好評を述べる
相手にお願いするときに「相手の高評価(好評)」を混ぜて伝える手法と言ってよいでしょう。
書籍では、「残業」というキーワードを使わずに、相手の仕事のクオリティを褒めつつ、結果として残業させるという話が載っています。
書籍に書いていませんが、例えば上司が「期待をかける」「将来への期待をほのめかす」ことで、同様の効果が得られるように思いました。
同じ部下に残業させるケースで、私が考えた例を一つ。
今、君が取り組んでいるのは部長も注目しているプロジェクトで、正直なところ他の人には任せられないんだ。
直接的な表現ではなく、その人が有能であり、今後の期待もかけつつ部下のハードワークを促しています。このような表現を意図的に使いこなしている上司は、有能だと思います。
伝え方⑤あなただけを強調する
「あなただけ」を強調して、自分だけが優遇されている心地よい気持ちを利用する手法です。
一つ前の例で挙げた「他の人には任せられない」もこの手法を使っていると言えるでしょう。
人は、数が少ないモノに価値を見出すものです。
モノでなくても、その他大勢の中から、自分が限定されている状況は、まさに自分の価値が高いという感情を抱きます。
それがたとえお世辞でも、言い方次第では、相手に気持ちよく「イエス」と言われば嘘も(お世辞も?)方便なのです。
伝え方⑥共感と同調を明確に示す
この書籍では「チームワーク化」という切り口で書かれています。
私は「You(あなた)にではなく、We(わたしたちが)」で表現せよ、という意味で捉えました。
例えば、子どもに「勉強しなさい」というと、母親が子供(You)に指示する表現です。しかし、「一緒に勉強しよう」に変えると、私たちが(We)になります。
また、この書籍では本田直之さんのプレゼンのテクニックも紹介されていました。冒頭で、例えば「面倒くさがり屋の人は誰か?」と言って挙手させておき、「私も同じです」と返す。これだけで同じ空気を会場内に広め、講演者と聴講者の距離を縮めています。
伝え方⑦感謝の気持ちを込める
最後に、たとえこれからのお願いであっても、表現に「ありがとう」を含めると、相手に気持ちよく「イエス(OK)」と言ってもらえる可能性があります。
書籍の例を示しておきます。感謝のないCと、感謝のあるDでどのような印象の違いを受けるか感じ取ってみてください。
C:領収書を落としてください。
D:いつもありがとうございます。領収書お願いできますか
感謝されて嫌な人は、ほとんどいないと思います。
しかし、最近、コミュニケーションの負担を減らすことにこだわるあまり、肝心なところで感謝のコメントを省略する例も見かけます。
感謝のコメントは、無駄ではなく、しっかりとリターンのあるものなので、感謝すべきところではしっかり「ありがとう」と言いたいものです。
「伝え方が9割」を読んで気づいたこと
ここまで読んだ方の中には、「これ本当に技術なの?」というものがあるかもしれません。
私も同じように思いました。相手を思いやる気持ちと、相手目線で語ることができれば、自然とできること。つまり心のあり方が問われています。
ですので、この本を読みながら、もう一度自分中心のコミュニケーションを取っていないか、振り返ってみると良いと思いました。
この本では、その他にも「強いコトバを作る方法」が書かれています。 特に「ギャップ法」がとても勉強になりました。
また、個人的に面白いなと思ったのが、コラムで書かれていた「ふせんマジックを使う!」です。こんなふせんの使い方で頼まれたら、そりゃ断れないなと思いました(笑)
とても良い本だと思いました、100万部売れていることも納得です。
「伝え方」は外国でも、心理学や修辞学の中で研究されています。 佐々木さんの伝え方は日本人に合った「やさしい伝え方」ですが、権威を使ったり、言い合いのときに話を定義しなおしたり、様々なテクニックがあります。
私は「影響力の武器」と「THE RHETORIC」がオススメです。この分野に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術